君を守りたい

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「………ずっと、そんな風に思いながら、生きてきたの?」 頬を撫でながら問うと、千波は小さく首を横に振った。 「………すみません。……死にたいとか、そんな風に思ってる訳やないんです。……ただ時々、どうしても寂しくなる時があって……」 「……………」 「発作に襲われる度に、忘れたらあかんって誰かに言われてるみたいな気がして。……たまに楽しくて笑ってても、私一人がこんな風に笑ったりしてていいんかなって……思う時があるんです」 微かに伏せた瞳が、またゆらゆらと潤み始めた。 陸は頬に触れていた手を、おもむろに千波の肩に置いた。 「俺には千波さんの苦しみや葛藤は、半分も理解することはできないけど。……もしかしたら、ご両親の気持ちなら、少しはわかるかもしれません」 「…………え?」 「これは、証から最近聞いた話なんですが……」 突然証の名前が出てきたので、千波は面食らって陸の顔に見入った。 その視線を受け止めてから、陸は再び小さく頷いた。 「証の母親は、証を産んですぐに亡くなったんです。……僕も記憶は曖昧なんですが、儚くて綺麗な人でした」 「………………」 「ただ結婚前に重度の心臓病が発覚して、一時は証の父親との結婚も諦めたそうなんです。……おそらく、子供は望めないから、と」 驚き、千波は息を飲む。 陸は淡々と先を続けた。 「けれど二人は結婚した。……そして、証ができた。……証の母親は、迷わず証を産むことを決めたそうです」 その時、ほんの少しだけ陸の瞳に哀しそうな色がよぎった。  
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