君を守りたい

15/22
前へ
/40ページ
次へ
「証もずっと、誤解して生きてきました。……自分は母親を殺した張本人だと。そしてそんな自分を、父は憎んでいるのだと」 「……………」 「お互い不器用ですれ違いが続いていたんですが、それが最近誤解だったとようやくわかって。……父親から、いかに愛されて望まれて生まれてきたかを、聞いたんです。……それこそ、命と引き替えにしてもいいぐらいに」 「………………」 「………そして、自分の名前の由来が、母親が生きてきた『証』だから。……だから証と名付けたんだと、教えられたそうです」 それを聞いた千波は、自分の心が大きく震えたのを感じた。 陸はそれに気付いたのか、頷きながら小さく微笑んだ。 「………ご両親は、千波さんだけでも助かって、絶対に喜んでいるはずです。……それをもう、口に出して伝えることはできないけれど」 「………………」 「そして、今ここに千波さんが生きているということが、ご両親や弟さんが確かに生きていた『証』なんじゃないですか」 「………………!」 堪え切れなくなり、千波は両手で口元を覆った。 込み上げてくる嗚咽に邪魔されて、上手く言葉が出てこない。 「………わ、……私……っ」 「はい」 「自分の幸せを、願ってもいいんでしょうか。……楽しい時は笑っても。……幸せな時は、それを噛み締めても」 陸が無言で首肯したのを見て、千波は無意識に陸の胸に縋り付いていた。  
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2192人が本棚に入れています
本棚に追加