2192人が本棚に入れています
本棚に追加
散乱した本を片付けた後、陸は一緒に本を探すのを手伝ってくれることになった。
横に並んで作業をしながら、千波は棚に向かったままポツリと口を開いた。
「………証さんの名前、そんな素敵な意味が込められてたんですね」
陸は一度チラッと千波に目を向けた後、笑って頷いた。
「はい、そうですね。俺も最近まで知りませんでした」
「………でも、誤解が解けてよかったですね。そんな……望まれて生まれたんじゃないなんて思いながら生きてきたなんて……可哀相すぎます」
「………………」
千波の言葉に、陸は苦笑を浮かべる。
「わかってないなぁ。……千波さんだって同じだったんですよ」
「…………あ」
ハッとして、千波は口元を手で押さえた。
「………ホンマ。……ホンマですね」
「でもそういうのって、第三者から見たら馬鹿げたことでも、当事者にとっては深刻なことだったりするんですよね」
「………………」
「………深く何も考えずに、相談できる相手が常にいればいいんだろうけど」
そう言った後、陸はどこか遠い目になった。
「まあ、今のあいつには柚子さんがいるからな……」
柚子の名前が出て、千波はドキッとする。
地震が来る前、ずっと陸の柚子への想いについて鬱々と考え込んでいた。
もしかしたらそれが原因で、発作を起こしてしまったのかもしれない。
「………………」
モヤモヤした気持ちを抑えることができず、千波はパッと横にいる陸の顔を仰いだ。
最初のコメントを投稿しよう!