君を守りたい

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波乱の新年会から二週間が過ぎた、ある日。 淡路島に、珍しく雪が積もった。 東京でも滅多に雪を見ることがなかったので、陸は物珍しくてついつい縁側へと向かった。 いつもの場所に腰を下ろし、じっと庭を眺める。 見慣れた庭だが、雪が積もっただけで全く違う景色になる。 ひどく静かで、けれどその静寂が心地好くて。 しんしんと這い上がってくる冷気に耐えながら、陸はぼんやりと庭を眺めていた。 「風邪ひきますよ、陸坊ちゃま」 たまたま廊下を通った初枝が、気遣うように陸に声をかけた。 陸は笑って初枝を仰ぐ。 「いや。……珍しくて、なんとなく」 「ほんま、珍しいなぁ……」 しみじみと呟き、初枝は溜息混じりに肩をすくめた。 「何もわざわざ、こんな日に積もらんでもええのにねぇ……」 「え?」 「ほら、千波ちゃん。今日ご両親の命日やから、上のお寺さんにお参りに行ってるでしょう」 「………………」 初枝の言葉に、陸はハッと目を見張る。 (……ああ、そうか。……今日は……) 1月17日───。 あの、大震災が起きた日である。 (そうか。……だから今日、千波さん休みなのか……) 最終的なシフトは陸がチェックするが、この日千波が休みを取っていたことに何の疑問も抱いていなかった。 「あそこのお寺さん、階段急なんよねぇ。……千波ちゃん、滑ってこけへんかったらええけど」 独り言なのか、陸に聞かせたかったのか、そう言い置いて初枝はその場を後にした。  
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