君を守りたい

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「その…、新年会の日に初枝さん達が噂してるのを聞いちゃったんです。招待客の何人かはご自分の娘さんを、陸様のお見合い相手にどうかって薦めてらっしゃったって……」 「………………」 (………また余計な噂話を~~……) さすがにイラッとして、陸のこめかみにピクリと青筋が浮かんだ。 それを千波に悟られないよう、陸は無理に笑顔を作る。 「僕は何も聞いてませんよ。どうせ僕がお見合いなんかしないとわかってるから、伯父で話を止めてるんでしょう」 「………そう、ですか」 心なしか安堵したように息をつき、千波は前を向いて再び歩き始める。 「………………」 (………そういうそっちは、どうなってんだよ……) 歩いていく背中を見つめながら、聞いてしまいそうになるのを陸はすんでのところで堪えた。 あの日、彼氏とけじめを付けると。 つけた時は報告すると言っていたのに。 あれから二週間、千波はそのことについては何も触れることはなかった。 おそらく何の進展もないから何も言ってこないのだろうが、さすがに待つ身としては辛く、長い。 「それでは、失礼します」 曲がり角まで来て、千波はペコリと陸に向かって頭を下げた。 陸もコートのポケットに手を突っ込んだまま、それに倣う。 「また明日。……滑りますから、気をつけて帰ってくださいね」 「………はい。ありがとうございます」 にっこりと笑顔を見せ、千波は陸に背を向けて坂道を登り始めた。 あの新年会以来、やはり少なからず二人の間にはぎくしゃくした空気が流れてしまっていて。 こんな風に長く話をしたのは久しぶりだった。 しばらくその後ろ姿を見送った後、陸は軽い溜息をついてから自宅へ向かって踵を返した。  
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