破滅と再生

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破滅と再生

桔平は自分の住むアパートを見上げると、ウンザ リとした気持ちになった。 池袋で私鉄に乗り換え、三つ目の駅で降りる。 沿線随一の長いアーケードを抜けた先の裏路地 に、そのアパートはあった。 隣の新築住宅に寄り掛かるようにして建ってい る。 どう見ても若干、傾いているのだ。 文学好きの涼子が、ふざけて「斜陽館」などと呼 んでいたのをふと思い出した。 「斜陽館」の崩れ落ちそうな屋根の上に、上弦の 月が哀しく輝いていた。 共同玄関を開けると、そこで靴を脱いで部屋に向 かう。 一階、二階、計・六つの部屋には、それぞれ得体 の知れない住人達が生息していた。 何しろ風呂無し四畳半…… 家賃二万円は、東京では月極駐車場より安い。 まず、まともな者が住まうようなアパートではな かった。 大袈裟に軋む狭くて急な階段を、桔平は這うよう にして登った。 疲れていた。 身体より心が……。 部屋に辿り着くと電気も点けず、ささくれた畳の 上に倒れ込んだ。
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