雪解けの頃

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これまでずっと胸の奥に押し殺していた気持ちを解放した今、もう二人は自分を止めることなど出来るはずもなかった。 絡み合うように互いの体に腕を回し、貪るように口付けを交わす。 「…………ん………」 離れたかと思うと、また角度を変えて唇を塞がれる。 その煽状的なキスに、千波は無我夢中で応えていた。 (………もう……どうなってもいい……) 陸の唇を感じながら、千波はぼうっと霞む意識の中でそう考えていた。 もうこのまま流れに身を任せる形になっても、もっと陸に触れてほしい。 確かな形がほしい。 「………ふ……ん……」 重なった唇の隙間から漏れ聞こえる小さな千波の声を耳にして、陸は体中が熱くなるのを感じていた。 ネクタイ越しにキスした時も、プロポーズのことを聞いて焦って無理矢理キスした時も、千波は完全に自分を拒絶していたのに。 今は触れても抱きしめても、全部応えてくれている。 そう思うだけで、気持ちが昂ぶって。 どんなにたくさん唇を奪っても、まだまだ陸には物足りなく感じた。 長く深いキスの後、陸はようやく千波の唇を解放し、次は首筋に口付けた。 唇だけでなく、千波の全てを感じたいと思ったのだ。 「………あ…っ……」 甘い声を漏らし、千波の体が小さく揺れる。 それでも千波は、陸を拒もうとはしなかった。 「…………千波さん」 耳元で囁き、陸は何度も千波の肌に唇を落とす。 その度に千波はくすぐったそうに身をよじり、吐息のような声を漏らした。 少しずつ、少しずつ、陸の体の重みが千波にかかり……。 気が付くと、二人は折り重なるようにして畳の上に倒れ込んでいた。  
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