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「……………?」
突然行為をやめた陸を、千波は怪訝に見上げる。
「………どうかなさったんですか?」
「………え。……あ、いや……」
千波を見下ろす陸の瞳は、微かに動揺したように揺らめいていた。
「下着……付けてないのか、と思って……」
「………………」
思いがけない陸の言葉に、千波はポカンと陸の顔を見つめる。
数回瞬きを繰り返したあと、躊躇いながら小さく頷いた。
「………はい。……寝る時は、上は付けませんけど……」
ぼんやりした口調で答えると、陸の顔がカーッと真っ赤に染まった。
それを隠すように拳を口元に当てる。
「………そ、そうですか」
「…………はい」
そこで二人は一拍の間、見つめ合った。
………やがて。
「…………ふっ」
「ふふっ」
どちらからともなく、二人は吹き出していた。
クスクス笑いながら、おでこをコツンと合わせる。
先程までは発情期の動物のようにお互いの肌を求め合っていたが、一拍の間があいたことで少し頭が冷えたようだった。
「………………」
しばらく笑った後、陸はふっと息をつき、困ったような苦笑を浮かべて千波の顔を見下ろした。
そうしてどこか躊躇うように、千波の髪を緩く梳く。
けれどまだその瞳は、熱を帯びたまま小さく潤んでいた。
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