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「今ちょっとだけ。……冷静になれました」
「………………」
「………千波さんは?」
サラサラと髪を撫でられながら問われ、千波は小さく頷いた。
「………はい。私も少し、冷静になりました」
「………………」
陸は気持ちを落ち着ける為か一度静かに息をつき、直後じっと千波の瞳に見入った。
「じゃあ今、聞きますね」
「………………」
「本当にこのまま、突っ走っていいんですか」
緊張気味にそう言った陸の顔を、千波は驚いて見上げる。
そうしてすぐに、陸が千波の気持ちを最終確認しているのだと気が付いた。
一時の感情じゃなく、勢いじゃなく、冷静になった今この時に判断してほしいと。
本当にこのまま、関係を持っていいのかと。
(………だって。……ずっと、触れたかった。……触れてほしかった)
それはずっと、抱いてきた想い。
けれど叶うはずもないと、いつも気持ちを押し殺してきた。
自分はこうなることを、ずっと望んでいた。
確かな『繋がり』が欲しい。
だから、迷いはない。
………このまま、陸に抱かれたい。
「………はい。……突っ走ります」
千波は迷うことなく、大きく首肯した。
ひときわ、陸の瞳が激しく揺らぐ。
「…………千波さん」
「迷いも躊躇いもありません。……私はもっと、陸様を感じたいです」
言い終わると同時に手を伸ばし、千波は強く陸の首にしがみついた。
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