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陸はぎゅっと目を閉じ、強く千波の体を抱きしめ返す。
畳に接していた千波の背中は、ひんやりと冷たかった。
「………ホントに?」
「はい」
「今のが、ラストチャンスですよ?……もう二度と、聞かないですよ?」
「…………はい」
クスッと笑いながら、千波は返事をした。
陸はもう一度強く千波の体を抱きしめたあと、そっと肩を掴んで引き離した。
「………………」
冷えた体に反して、少しのぼせた赤い頬に手をかけ。
陸はゆっくりと千波に口付けた。
それは先程までの激しいキスではなく、どこか怯えたような、静かなキスだった。
「……………あ」
陸の手に力が入り再び押し倒されそうになったので、千波は慌ててそれに抗うように肩に力を入れた。
「ま、待ってください」
「……………?」
「あ、あの。……せめて、ベッドで」
遠慮がちに切り出すと、陸はハッと目を見張った。
「す、すみません。……なんか、気持ち先走ってしまって」
「…………いえ」
小さく首を振ったその時、陸は千波の膝下に手を入れ、あっという間にその体を横抱きにして抱き上げた。
「……………きゃっ」
思いがけない行為に驚き、千波はとっさに陸の首にしがみつく。
同じ目線で目が合うと、陸は少しいたずらっぽく笑った。
「知ってますよ。どこにベッドがあるか」
「………………!」
クリスマスの日に酔い潰れた時の苦い記憶が蘇り、千波はカッと顔を赤らめた。
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