雪解けの頃

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陸はベッドに歩み寄り、そっと千波をそこに横たえさせた。 無意識に千波は目を閉じる。 すぐさま、陸が覆いかぶさってくる気配を感じた。 「………………」 目を開けると、すぐ側に陸の顔があった。 ドキリとした次の瞬間、唇が重なる。 再び目を閉じてそのキスに応えながら、いよいよだと、漠然とした覚悟のようなものが胸に込み上げてきた。 (…………陸様………) 千波にとって、陸は神聖に近い存在で。 こういった行為を陸がすることすら想像できなくて、どんな風に陸が女性に触れるのか、ずっと知りたいと思っていた。 そんな風に考える自分を自嘲した時もあったけれど。 それがまさか身をもって経験する日が来るなんて、夢にも思っていなかった……。 「……………っ」 パジャマの一番上のボタンが外され、千波は恥ずかしさで身を縮める。 もちろん色んなコンプレックスがあり、自信などあるはずもない。 だがこの気恥ずかしさが、千波は心地好くもあった。 いつも誰かと初めて肌を重ねる時に感じる、心地いい緊張と、羞恥心。 それを再び経験することになるなんて、思ってもみなかった。 しかも緊張の度合いでいうと、今回が群を抜いている。 ずっと憧れていた人……そしてまだお互いに敬語を使っている相手と、関係を持ったことなどなかったから……。  
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