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やっと陸と結ばれて、幸せなはずなのに。
確かな言葉をくれない陸に、ずっと不安を感じていた。
今の自分は、ただあの言葉だけに縋っている。
仕事さえ決まれば、陸はきっと……。
「…………………」
自分にそう言い聞かせていた千波は、じわっと目に涙が浮かんでくるのを感じて慌てて奥歯を噛み締めてそれを堪えた。
みどりから預かった紙袋が、実質よりもずっと重く感じる。
(………なんで、今やったらあかんの? 絶対に、仕事決まってからやないと、あかんの?)
今すぐに、好きだと言ってほしい。
たった一度でいいから。
陸の本当の気持ちを聞かせてくれれば、自分はいくらでも待てるのに。
「………………っ」
堪えていても、不安に押し潰されそうな心に負けてしまい、千波の両目から涙がポロポロと零れ落ちた。
(陸様………陸様……)
無意識に目を背けていた現実を、みどりの言葉で浮き彫りにされて。
いかに自分の心がいっぱいいっぱいだったかを、千波は痛感した。
(………今すぐ、聞きたい……)
昨夜のこと……そして陸の本当の気持ち。
ちゃんと陸の口から聞いて、この不安を払拭したい。
「………っ、……うっ」
そんな風に考えてしまう自分が、すごく贅沢になっているように思えて。
自己嫌悪や、嫉妬や、猜疑や、不安……そんな色んな感情がグルグルと頭の中を渦巻いて、息苦しくて。
千波はしばらくその場に立ち尽くし、顔を覆って激しく嗚咽していた。
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