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少女が窓を開けると、ソヨソヨと柔らかな風が吹いてきた。
風は少女の白い肌を撫でると、家の中に入ってきた。
窓から見える外の景色は緑の山、山、山。
そして昼過ぎにはすぐ山陰に隠れてしまう小さな畑。
ここは山の奥地にあるひっそりとした小さな集落で、住民も数十人しかいない。
殆どの住民は農業と狩猟で生計を立てている。
窓を開けた少女の名前は浅見夢衣(あさみ むい)。14歳。
浅見家の先祖は庄屋であり、明治期に建てられた夢衣の家は今では珍しい古民家だ。
昔の大家族の名残で10部屋もある。
そのうち4部屋の襖を外すと、一つの大座敷にできる。
来客からは“犬神家”ができると必ず言われる。
この古くて無駄に広い母屋と離れに、両親、家政婦の早苗とたった4人で暮らしている。
夢衣は生まれつき心臓が弱く、学校をよく休んでいる。
村に学校はないので、2キロ先の別の大きな村まで、自転車または歩いて通わなければならない。
それでちょっとしたことで休んでしまう。
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