第五部 哀しみとともに(最終話)

23/31
400人が本棚に入れています
本棚に追加
/226ページ
「でも着ている服は徳子さんと同じだ」 住職は納得のいかない顔をしている。 「徳子さんって、いつからお寺に出入りしていたんですか?」 「二ヶ月ほど前からです。その前は近所のおばあさんが掃除に来てくれていましたが、今日から私になりましたと、来られるようになったんです」 「前のおばあさんの名前は?」 「名前を気にしたことなかったので、聞きませんでした」 おばあさんと美女では関心の度合いがあからさまに違う。 「二ヶ月前って猿塚が壊れて怨霊が暴れだした頃ですね。もしかしてその徳子さんに頼まれて呪符をつくったのですか?」 法蓮がこちらに来てからすでに一ヶ月が経っていた。 「そうです。興味があるので是非作って欲しいとせがまれて」 「ようやく分かりました。住職は怨霊に騙されていたんですよ。怨霊は風間寺に掃除で出入りしていたおばあさんに取り憑き、美女に見せかけて住職に取り入り、自分の狙い通りに動かした」 「ええ!?」 住職はショックを受けている。 「村祭りで怨霊を私の攻撃から護る呪言を唱えたのも住職ですね」 「徳子さんが悪い坊主に口説かれて困っている、あなたを懲らしめて欲しいと頼まれました。それで村祭りに行き、神社会館の外から頼まれた祈祷をしただけです。それが全部嘘だったなんて」 悪い坊主といわれるままに事実確認せず、法蓮の邪魔をした住職が相当悪い坊主だ。 住職は一応反省を見せたので、法蓮は許すことにした。
/226ページ

最初のコメントを投稿しよう!