401人が本棚に入れています
本棚に追加
/226ページ
その時女の恨めしげな声が聴こえた。
“おのれえ! よくも邪魔したな!”
まだやられていなかった。
おばあさんから飛び出た女の怨霊は、法蓮と住職に向かって、“許さぬ!”と怒りを向けている。
住職は女に怒鳴った。
「お前は私を騙したのか。この悪霊め!」
“ふん。僧職のくせに女の色香に惑わされたお前に説教を垂れる資格はない!”
「やっぱり徳子さんはこのおばあさんだったのか。ということは、私が抱いた女は美女ではなく、このおばあさんの体!?」
ようやく現実を理解した住職は真っ青な顔になった。
「あちゃー、住職、やっちゃったんですか」
僧侶でありながら肉欲に負けて幽霊の色香作戦にまんまとはまるとは情けない。
「住職。住職の言う慈悲は欲望であり、煩悩の愛だ。大きな言い間違いです」
住職はショックのあまり腰が抜けへたり込んだ。
もう何の役にも立たない。しかしこれで邪魔もされない。
法蓮は女に訊いた。
「お前は早苗さんと亜紀さんにも取り憑いたのか?」
“ああ。猿の後ろに隠れていた。さすがに猿にあれは難しかったのでね。でもあいつらは充分私の身代わりになった。それに失敗したけど数百年ぶりに楽しめたよ”
よほどおかしいのか、“クッ、クッ、クッ、クッ”とずっと笑っている。
最初のコメントを投稿しよう!