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疲れたような陸の姿を目の当たりにして、やっと自分の立場を思い出すなんて。
自分には、そんな権利はないのに。
たった一度関係を持っただけの付き合ってもいない相手にこんな風に責められて、きっと陸も辟易しているに違いない。
(この年で、一回寝たぐらいで勘違いして彼女みたいな口きいて……。めっちゃ私、重いめんどくさい女やんか……!)
恥ずかしくて、このまま消えてしまいたい。
いや、もういっそ自分なんか消えてしまえばいい……。
「……………っ」
ボロボロと大粒の涙を零している千波に気付いた陸は、我に返り慌てて千波に手を伸ばした。
「…………千波さ……」
「────もういいです!!」
陸の手をパッと振り払い、千波は無理矢理に笑顔を作って陸の顔を見つめた。
これ以上、陸を困らせたくない。
重い女、めんどくさい女だと、思われたくない。
………今日が最後なのに、そんな風に思われたまま、別れたくない───。
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