摂氏100℃の微熱

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………そう、自分達は、圧倒的に言葉が足りなかった。 多分そうだろう、相手はこう思っているだろう、いつかは言ってくれるだろう。 …………だから、きっと大丈夫。 そんな風にお互いを過信し過ぎて、ろくに想いも伝えないまま、気持ちだけが先走って体を重ねてしまった。 体を重ねたことで、心も重なったのだと勘違いして……お互いの心の小さなズレに気付けていなかったのだ。 …………不安だから、今すぐ気持ちを聞かせてほしいと。 本当は、陸にちゃんと伝えるべきだったのだ。   睨むように険しい顔で千波の話を聞いていたみどりだったが、やがて聞き終えると忌ま忌ましげに長い髪を掻きあげながら、ハアッと大きな溜息をついた。 あからさまに呆れたような半眼を千波に向ける。 「あなたって……救いようのないアホね」 「………………」 あまり面と向かって言われたことのない辛辣な言葉に、グサッと見えない矢が千波の心臓を刺し貫いた。 だが反論の余地がなく、千波は無言で唇を噛み締めた。 そんな千波の様子を見て、みどりは苛立たしげに腕を組んだ。  
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