摂氏100℃の微熱

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その日の昼休み。 いつもは昼食を食べた後、10分ほど祖母の病室に顔を出すのが日課なのだが。 この日は病室へ行く前に、千波はふらりと屋上へと立ち寄った。 少し頭を冷やして、一人でゆっくり考えたかったからだ。 「……………っ」 ドアを開けた瞬間、ザアッと強い風に煽られ、千波は一瞬息を詰めた。 乱れた髪を片手で押さえ、真っ直ぐに手摺りに歩み寄る。 屋上からは海が見え、日が高い今はギラギラと太陽の光を反射していた。 ここから自分の住む町……五十嵐家が見えることに気付いたのは、一週間前。 今そこに陸がいるかもしれないと思うだけで、胸が引き絞られたように痛んだ。 (…………陸様………) 手摺りをギュッと握りながら、千波は唇を噛み締める。 きっと自分は、いつか時間が経てば陸とのわだかまりが解けると楽観視していたに違いない。 同じ町に……すぐ近くにいるのだから、いつかは誤解も解けて前のような関係に戻れるにちがいない、と。 ………まさか陸が、東京へ行ってしまうなんて夢にも思わず。 本当は心のどこかで、そんな甘えがあったのだ……。  
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