摂氏100℃の微熱

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(………だから? だから23日、連絡してきてくれへんかったん? ……事情が変わったから……。……東京へ行くことになったら、もう私のことは関係ないから…?) じわっと目に涙が浮かび、見えていた五十嵐の家の景色が朧に滲む。 もう、陸の中では全て終わったことなのだろうか。 ………もう陸にとって自分は、必要のない人間なのだろうか。   『ついて行きたい人ができたら、迷わずその人について行き』 叔母に言われた言葉が不意に頭を掠め、千波はハッと顔を上げた。 流れ出た涙を、千波は指で拭う。 (………おばちゃん……) あの時は、そんなことにはならないとどこかで高をくくっていた。 万が一起こりうることだとしても、まだ当分先のことだと。 真剣に、叔母の言葉を考えたことなど一度もなかった。  
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