摂氏100℃の微熱

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(離れたくない。……でももう……手遅れかもしらん……) 自分がそう思っていても、肝心の陸の心がもう自分から離れてしまっているかもしれない。 それに何より……。 (陸様について行きたい。……でも、島を出たくない) 田舎育ちの自分に、東京なんかで生活できるとは思えない。 ずっとずっと、海と山と、虫の声と、噂好きだけれど温かい人達に囲まれて暮らしてきて、すっかりそれに馴染んでいるのに。 (それに、おばあちゃんとも離れたくないよ……! お母さんともお父さんとも空とも、離れたくないよ……!) 祖母のいる町、家族が眠る町。 それらを置いて、島を出ていくなんて考えられない。 「……………っ」 たまらず、千波は手摺りに顔を突っ伏して声を殺して嗚咽した。 …………でも。 陸と離れることは、もっと考えられない。 祖母達と離れることになっても、陸とは離れたくない。 …………ずっとずっと、一緒にいたい。 陸の傍に、いたい。  
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