摂氏100℃の微熱

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一つを食べ終え、二つ目の林檎に爪楊枝を刺したと同時に、千波は思い切って口を開いた。 「………なあ、おばあちゃん」 「ん?」 「私がおらんようになったら、寂しい?」 唐突にそう切り出すと、祖母はゆっくりと千波に視線を向けた。   「…………え?」 「私が島から出ていったら、寂しい?」 話しながら、既に千波の鼻の奥はツンとし始めていた。 祖母は何も言わず、ただ静かに千波の顔を見つめていた。 千波は膝の上で、ギュッと両手を握りしめる。 「………私な。……今、好きな人がおるねん」 「………………」 「でも、良平とちゃうねん。……良平とは色々あって、ついこの間別れてん。……心配させたくないから、おばあちゃんには黙ってたんやけど……」 それでも祖母は驚いた表情一つ見せず、黙って千波の話を聞いていた。 千波の目に、大粒の涙が浮かぶ。 「………その人が、来月東京に行くことになって……」 「………………」 「私、どうしてもその人について行きたいねん」 握りしめた拳に、溢れ出した涙がポタポタと落ちて弾けた。 祖母の顔を見ていると、子供の頃からの色んな思い出が蘇ってきて。 千波の胸が、ちぎれそうに痛んだ。  
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