1927人が本棚に入れています
本棚に追加
一つを食べ終え、二つ目の林檎に爪楊枝を刺したと同時に、千波は思い切って口を開いた。
「………なあ、おばあちゃん」
「ん?」
「私がおらんようになったら、寂しい?」
唐突にそう切り出すと、祖母はゆっくりと千波に視線を向けた。
「…………え?」
「私が島から出ていったら、寂しい?」
話しながら、既に千波の鼻の奥はツンとし始めていた。
祖母は何も言わず、ただ静かに千波の顔を見つめていた。
千波は膝の上で、ギュッと両手を握りしめる。
「………私な。……今、好きな人がおるねん」
「………………」
「でも、良平とちゃうねん。……良平とは色々あって、ついこの間別れてん。……心配させたくないから、おばあちゃんには黙ってたんやけど……」
それでも祖母は驚いた表情一つ見せず、黙って千波の話を聞いていた。
千波の目に、大粒の涙が浮かぶ。
「………その人が、来月東京に行くことになって……」
「………………」
「私、どうしてもその人について行きたいねん」
握りしめた拳に、溢れ出した涙がポタポタと落ちて弾けた。
祖母の顔を見ていると、子供の頃からの色んな思い出が蘇ってきて。
千波の胸が、ちぎれそうに痛んだ。
最初のコメントを投稿しよう!