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「………ごめん、おばあちゃん。ここまで育ててきてくれたのに、薄情なこと言ってごめん。……ごめん……」
「………………」
その時、ようやく祖母が小さく身動きした。
ふうっと息をつき、そっと千波の手を握りしめる。
涙でぐしゃぐしゃの顔を上げると、祖母は穏やかに微笑んだ。
「全然。……これっぽっちも寂しないわ」
「……………え」
ケロッとした祖母の言葉に、千波は目を丸くする。
「それより、ようやく肩の荷が下りるわ。やっとあんたが独り立ちするんか…って」
「………………」
「私やったら大丈夫や。千波が嫁に行ったら、寿満子が高松に呼んでくれるって言うてるし。なーんにも寂しいことあらへんわ」
明るく笑う祖母を、千波は言葉もなく見つめる。
するとそこで初めて、祖母は眉を下げて目に涙を浮かべた。
「せやからあんたは何にも気にせんと、勝手に東京でもどこでも行って、幸せになりなさい」
サアッと春風が舞い込み、緩やかにカーテンを揺らして。
涙で濡れた千波の頬を、ひんやりと撫でた。
「……………っ」
ヒクッと嗚咽が込み上げ、たまらず千波は祖母の首に絡み付いた。
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