摂氏100℃の微熱

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「おばあちゃん……!おばあちゃん!」 「……あーあーもう。いくつになったんや、あんたは」 千波の背を優しくさすりながら呟いた祖母の声は、涙混じりに震えていた。 千波は懐かしい祖母の温もりと匂いを噛み締めながら、激しく泣きじゃくる。 「あんたは幸せにならなあかんねん。子供の頃から辛い目にばっかりおうてきて、苦労ばっかりさせてしもた。……悪かったなぁ」 「………そんなことない!……そんなことないよ!……私、こっちに来てからは幸せやったもん!」 祖母にしがみつきながら、千波は激しく首を横に振る。 震災に遭って、家族を亡くして。 確かに死にたいような気持ちでこの島に来たけれど。 明るい祖母と、15年前に亡くなった祖父の愛情を一身に浴びて育って。 …………私は本当に、この島で生まれ変われたのだ。   「………私。ほんまにおばあちゃんに感謝してる。……ここまで育ててくれて、ほんまに……」 「当たり前のことやろ、あんたは可愛い孫やねんから」 ようやく体を離し、祖母は千波の顔を間近で覗き込む。 まだ涙を止められない千波とは対照的に、祖母の目にもう涙はなく。 どこかホッとしたような、晴れやかな表情をしていた。  
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