摂氏100℃の微熱

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「今までありがとうな、千波。毎日毎日通うの、大変やったやろ」 「………っ、そんなことない」 フルフルと首を横に振ると、祖母は笑って千波の肩に手を置いた。 「今からはもう自分の為に……その好きな人の為に生きていき」 「………………」 「自分で決めたことやねんから、ちょっとぐらいの辛いことは我慢しなさい」 「…………うん。わかってる」 「でも覚えとき。どうしても辛くてしんどい時は、おばあちゃんのとこに来たらええ」 「………………」 「おばあちゃんだけは、何があっても千波の味方やから」 「……………っ」 ぎゅっと瞑った両目から、再び大粒の涙が零れ落ちた。 祖母の言葉が、胸に沁みて。 まだほんの少し胸の奥で燻っていた小さな迷いが、全て吹き飛んだような気がした。 何があっても頑張ろうと、そう心に誓えた。 (………ありがとう、おばあちゃん……) 祖母に背中を押してもらえたことで、千波の中でようやく決心が付いた。 今まで待ってばかりいたけれど、それじゃダメなんだ。 陸を失いたくないから。 だから今日、陸に会いに行く。 自分から陸に、全ての気持ちを伝えにいく。  
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