摂氏100℃の微熱

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※※※※※※※ その日、仕事を終えてすぐ。 千波は海沿いの道を五十嵐家へ向かいながら必死で自転車を漕いでいた。 一旦覚悟を決めてしまうといてもたってもいられなくなり、一刻も早く陸に会いたくなったのだ。 もしかしたらもう、手遅れかもしれない。 陸は自分に愛想を尽かしてしまったかもしれない。 そんな思いが、今まで一歩踏み出す勇気を奪ってしまっていたけれど。 (待ってるだけやったら、あかん……。私が酷いこと言ったせいで今の事態を引き起こしたんやから、私が自分でなんとかせなあかんねや) 陸に、今の自分の気持ちを全て伝えよう。 あの日言ったことは全て嘘だということ、陸をすごく好きなこと、そして陸とずっと一緒に生きていきたいという気持ち……。 伝えたところでもうどうにもならないかもしれない。 陸に完全に拒絶されるかもしれない。 …………けれど動かなければ、何も始まらないし、終わらない。 どんな結果になったって、全てありのまま受け止めよう。 どうせする後悔なら。 何もしなかった時の後悔より、何かをした後で感じる後悔のほうがずっと意味があると思うから──……。  
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