掛け違い 2

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その瞬間、陸の顔色がサッと変わった。 それを見た千波の中で、何かがプツンと切れてしまった。 「ホテルの洗面所に、腕時計を忘れていたそうです」 紙袋を陸の胸に押し付けるようにして、千波は語気を強くした。 陸の顔色がみるみる蒼白になっていく。 「……………っ」 その顔が、浮気現場に踏み込んだ時の良平の顔と重なって見えて。 目に浮かんできた涙をごまかすように、千波はガバッと深く頭を下げた。 「失礼します……!」 それだけを言って踵を返すと、陸はハッとして慌てて千波の手首を掴んだ。   「待ってください!!」 「……………っ」 「千波さん、何か誤解してませんか…!?」 千波はバッと陸の腕を振り払い、勢いよく陸に向き直った。 「誤解って、なんですか!?」 「…………………」 「誤解されるようなこと、何かあったんですか!?」 今まで見たこともないような千波の剣幕に、陸は一瞬気圧される。 だがすぐに落ち着こうと、一度深く息を吸った。  
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