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「何もないんやったら、なんで隠そうとしたんですか…!?」
「………っ、だからそれは…っ」
「泣いて縋られたら、陸様は誰とでも一夜を過ごすんですか…!?」
「…………………」
千波の言葉に、陸は眉をひそめる。
「……………え?」
「好きじゃなくても、可哀相だと思ったら一晩一緒にいてあげるんですか…?」
涙ぐんだ目で、千波は陸を見上げた。
陸はすぐさま首を横に振った。
「みどりさんと朝まで一緒にいたのは、彼女が可哀相だったからとか同情したとか、そういう理由じゃないんです」
「………じゃあ、何なんですか?」
「………………」
グッと言葉を詰まらせ、陸は口を開きかけて言い淀む。
何かを躊躇している陸を見て、千波の心は完全に打ち砕かれてしまった。
(………なんで。……この期に及んで、言われへんことなんかあるの……?)
千波の誤解を解くよりも。
みどりと朝まで一緒にいた理由を話すことのほうが難しいということなのだろうか。
「………………っ」
ふっと千波は醜く笑い、陸の顔を見上げた。
そんな千波の表情を見たことのなかった陸は、圧されたように鼻白む。
千波は自分を指し示すように、片手を胸に当てた。
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