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「…………じゃあ、私は?」
薄く笑みを浮かべながら、千波は陸に問うた。
結ばれたあの日から、ずっと胸に燻っていた思い。
………何故あなたは、私と寝たの?
「……………え?」
「あの夜私と一緒にいてくれたのは。……私が泣いて縋ったからですか?……みどりさんが同情じゃないんなら、私は何なんですか?」
「…………………」
言い終わると同時に、陸の顔色がみるみる変わっていった。
その目に、悲しみとも怒りともつかない色が過ぎる。
「………俺が、あなたを同情で抱いたと?」
「…………………」
「本気でそう、思っているんですか?」
初めて千波から目を逸らし、陸は悲しげにそう呟いた。
目を伏せ、持て余したように後頭部を掻きむしった陸を目にし、千波はハッと我に返る。
今自分が陸に投げ付けた数々の言葉を思い出し、千波は思わず両手で口を覆った。
(………私。……私、何問い詰めてんの?……彼女でもないのに、まるで彼氏の浮気を疑ってるみたいに……)
自覚した途端、カーッと千波の顔に血が上った。
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