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(…………陸様………)
そっと指で涙を拭う千波の前で、陸は最後の一言をこう締めくくった。
「必ず千波さんを幸せにすると約束します。一生全力で彼女を守っていきます。……だから安心して、ここから千波さんと僕を見守っていてください」
力強くそう言い切った陸の横顔は凛として、どこか自信に満ちたように晴れやかだった。
やがて陸はふっと息をつき、膝に手をついてゆっくりと立ち上がった。
少しはにかんだような笑顔で千波を振り返る。
「………今ので大丈夫だったかな。お前なんかで安心できるかって思われてたりして」
「────まさか」
涙ぐみながら笑い、千波はそっと陸の肩に頭を預けた。
「私にはもったいないぐらいの人だって思ってますよ。……そういう意味では、千波にちゃんとその人の嫁が勤まるのか…って、逆に不安になってるかも」
「そんなことないですよ。……でも」
陸は千波の肩に手を回し、千波の体を胸に引き寄せる。
「ここではっきり約束したから、ちゃんと果たさないといけませんね。……かなり気は引き締まったかな」
「………………」
覚悟を決めたような深い声が、千波のすぐ耳元で聞こえた。
胸がいっぱいになり、千波はきゅっと陸の胸元を握りしめる。
その左手の薬指に嵌められた指輪が、春の陽射しをキラキラと目映ゆく反射していた。
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