摂氏100℃の微熱 2

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「千波さんが彼にプロポーズされて迷っていた時、俺に言ったでしょう? 三十路手前の女の気持ちなんか、俺にわかる訳ないって。 ………それを聞いて思ったんです。好きだからって気持ちだけじゃダメなんだって。 千波さんに気持ちを伝える時は、ちゃんと結婚の意思も明らかにしないといけないんだろうなって……」 「………………」 「でもそうなったら、早々に仕事決めないと…って思って。無職でプロポーズなんてあまりにも格好がつかないし、千波さんだって不安だろうな…って。……そんなことを色々考えたら、なかなか好きだって口にできなかったんです」 みっともない男のプライドです、と言って陸は自嘲気味に笑った。 初めて陸の本心を聞き、またそこまで陸が自分のことを考えてくれていたのだと知り、千波は心から驚いてしまった。 「………陸様……」 「………あとどうしても、前の彼と5年も付き合ってたって事実がネックになってしまって。 どうしたって彼のほうが千波さんのことよく知ってる訳だし……。プロポーズの時に指輪を貰ったって聞いて、本当に悔しかったんです。 ………俺は、サイズも好みもわからないから、絶対敵わない、なんて……そんな『形』ばかりを気にしてしまっていました」 そこで陸は顔を上げ、千波を見つめながらふっと笑みを漏らした。 「でもあの日、あんな風にあなたが思っていたって初めて知って……。何もかもが噛み合わなくて、伝わらないもどかしさにイライラして。……でもそこでやっと気が付いたんです」 「………………」 「伝わらないんじゃなくて、俺が何も伝えてなかったんだってことを」 パッパッと手についた砂を払い、陸は膝立ちになってもう一度千波の手を握りしめた。  
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