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「…………陸様?」
「………だから、あの日、です」
「あの日……?」
ピンとこない千波はますます首を捻った。
陸は観念したように目を閉じ、思い切って口を開いた。
「あの日、初めてあなたを抱いた時。……その最中に、です」
「……………っ!!」
ようやく陸が口ごもっていた理由がわかり、千波の顔がカアッと赤らんだ。
それと同時にあの夜のことがまざまざと脳裏に蘇る。
(……そっか。……やっぱりあれ、夢とちゃうかったんや……)
熱くなった頬を押さえ、千波は恥ずかしさでじっと砂浜に目を落とした。
「す、すみません。……私、あの時はもう、なんだか無我夢中で、途中から記憶が飛んじゃってて……」
「────いえ」
「………………」
しばらく気まずげにお互い俯いて押し黙っていたが、やがて陸が重々しく口を開いた。
「でも……きっと本当は、何度でも言うべきだったんです。そうしていればきっと、あんな風にこじれることはなかったと思います」
千波は目を上げて陸の顔を見つめる。
「言わなくても俺の気持ちは通じてると。……体が繋がったことで心ももう繋がったんだと思い込んで、千波さんをそんなに不安にさせてるなんて思いもしなかったんです」
陸は膝の上で強く拳を握りしめた。
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