摂氏100℃の微熱 2

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「どうして知ってるんですか?」 「………………」 みどりの名前を出していいものかどうか迷い、答を逡巡していると、陸はヤレヤレという風に肩をすくめて苦笑した。 「また噂話ですか。ホントに広まるの早いなぁ……」 呆れた口調ではあったが、陸は東京行きのことは否定しなかった。 言葉を無くす千波に気付かず、陸は笑いながら続けた。 「そうなんです。来月の頭から東京へ行ってきます」 「………………」 千波はぼんやりと陸の顔を見上げる。 「………証さんの会社、ですか?」 「はい。急に呼び出されて、仕事押し付けられて。……相変わらず強引な奴で……」 笑いながら淡々と語る陸を見て、千波の胸は切なさではち切れそうになった。 ………何故陸は、こんなに平然と東京行きの話をするのだろう。 もう会えないかもしれないのに。 もうこれで、最後かもしれないのに。 それとも陸の中で自分とのことは、完全に終わってしまったことなのだろうか。 ………もう、完全に手遅れなのだろうか。 (………嫌や。……そんなん……) 千波はぐっと奥歯を噛み締める。 これで終わりになんか、絶対にしたくない。 陸を絶対に失いたくない。 今まではしがらみや、意地や、羞恥心や……それらの色んなものがことごとく自分の心に蓋をして、遠慮をして、素直になることができなかった。 でももう、そんなことはどうだっていい。 陸を失うことに比べたら、そんなことはごくごく些細なことだから。 …………陸のことを、愛しているから。  
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