1930人が本棚に入れています
本棚に追加
「────私を、東京へ連れていってください!!」
気が付くと、千波は陸に向かってそう叫んでいた。
言い終わると同時に、じわっと目尻に涙が浮かぶ。
陸は唖然としたように目を見張り、そのまま千波の顔を凝視した。
「……………え?」
「突然こんなこと言ってすみません!! 迷惑だってことはわかってます!……でも、……でも……」
言いながら無意識に、千波は陸の両腕に縋り付いていた。
下から真っ直ぐに陸の顔を見上げる。
「でも、陸様と離れたくないんです! ずっと一緒にいたいんです! この島を出ることになっても、私はあなたについて行きたいんです!」
「…………………」
千波が言葉を重ねる度に、陸の目の色が少しずつ変わっていった。
何か言いたげに自分を見下ろす陸を見て、千波は大きく頷いた。
「あの時は寂しかったからなんて言ってしまったけど、あんなの全部嘘です。………好きやから。……陸様のことがどうしようもないぐらい好きやから……。だから私、あの夜一緒にいてほしいって言ったんです」
「………………」
「お願いします。………私を、一緒に東京へ連れていってください」
懸命に。
たどたどしくはあったが、ひたむきに。
千波は今の自分の本当の気持ちを全て陸にぶつけた。
これでもし、陸に拒まれたとしても。
………もう何も、思い残すことはない。
恥も何もかもかなぐり捨てて。
思いの全てを、ちゃんと陸にぶつけられたから……。
最初のコメントを投稿しよう!