摂氏100℃の微熱 2

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「…………えっ……と」 困ったように頭を掻き返答に窮してしまった陸を見て、千波はキュッと拳を握りしめる。 明らかに困惑している陸の様子に、やはりもう手遅れなのかと絶望的な気分に襲われた。 「やっぱり……駄目、ですか」 ここで泣くのは狡いと思い、なんとか涙を堪えて尋ねると。 陸はハッと顔を上げ、慌てて手を横に振った。 「いや、そうじゃなくて……」 「……………?」 「千波さん、何か誤解してませんか?」 「え?」 訝しげに千波は陸の顔を見上げる。 「…………誤解?」 「はい。誰にどういうふうに聞いたのか知りませんけど……」 そこで陸は一旦言葉を切り、直後吐き出すように一気に言った。 「確かに俺、東京に行きますけど。友人の結婚パーティーに出席するだけで、三日ぐらいでここに帰ってきますよ」 「…………………」 ポカンと千波は陸の顔を見上げる。 しばらくの間、二人は困惑の表情で互いの顔を見つめていた。 やがて千波は我に返り、思いっ切り眉間に皺を寄せた。 「……………は?」 「いや、だから。また俺、島に戻ってきますよって」 「………………」 ようやく陸の言葉の意味を理解した千波は、唖然として思わず持っていたバッグをドサッと砂浜に落としてしまった。 あんぐりと口を開け、オレンジ色に染まった陸の顔を見上げる。 「はあああぁぁっ!? 何ですか、それっ!?」 「………っ、知りませんよ。千波さんが勝手に誤解したんじゃないですか!」 千波の剣幕にビクッと体をのけ反らせながらも、陸は理不尽だと言わんばかりにそう反論した。  
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