八月十五日

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「お願いです。皆さん・・・『引揚者』と一緒に日本へ帰ってください・・・。 今の日本には皆さんの様な方が必要なのです・・・。 私は知っています。 今までは、軍の検閲がありましたので隠していましたが・・・今だから言います。 日本は、アメリカの爆撃で焼け野原となり、国民は、家も無く・・・飲まず食わずの・・・苦しい生活をしているのです・・・。」 少尉さんの言葉に、気丈にも頑張っていた部下の看護婦は両手で顔を覆って泣き出しました・・・。 私も悲しみを押さえることが出来ませんでした。 翌日、私達は、軍の用意したトラックに乗って、『張家口』へ向かいました・・・。 『張家口』に着くまでの間、少尉さんは不安に駆られる私達を励ましてくれました。 真剣に・・・そして時には冗談も交えて・・・私達は不安が薄らいでいくのを感じました。 そして、私は分不相応にも、この少尉さんに密かな思いを抱いてしまったのです。
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