夢違いの獏の札

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「夢違いの、獏の札?」 「えぇ、この札はね、昔の人が悪夢を見ないように寝るときに枕元に忍ばせたらしいの。  ま、これは直接関係ないんだけど」 そう言ってサッと札を手に取った。 赤い濡れた唇の元に札を寄せ、悪魔のように囁いた。 「拓未くんに、獏になってもらいたいの」 はっ? 誰か、この人逮捕してくれないか?ヤバイヤバイ。 人間が獏になれるわけないだろ? 目を逸らしたいのに、逸らすことを許されない。 恐ろしい眼力で睨みつけられる。 あぁ、さっき睨むんじゃなかった。 高校生にしてチビリそうになるくらい、怖い。
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