3994人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ
「だって、前と違って、メールとか、来なくなったし。そんなお誘いとか、もうないんだと思って……、私、何かしたかな、って……」
「ちょ、ちょっと待って羽村さん!」
大きな手が、顔の前にかざされた。
その手の輪郭が、ぼやけているのは私の目に浮かぶ涙のせいだ。
「……参ったな、そんな風に思われてたか」
そう呟いて短い髪をくしゃくしゃとかき乱した神谷さんに、胸が苦しくなる。
いまにも涙が溢れてしまいそうで、ぐっと耐えた。
「違うんだ、それは……ただ、遠慮してただけだよ」
「……遠慮?」
「そう」
神谷さんはワイングラスを手に取って、残りを流し込んだ。
結構な量があったのに、一息で。
そして、静かにグラスを置いてから、私の方をじっと見つめてきた。
.
最初のコメントを投稿しよう!