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「あ、うまいねこれ。野菜の……どれだろう」
「ラタトゥイユ、ですね。でもホント、美味しい」
「ああ、これか。なるほど」
『前菜の盛り合わせ』と書かれたメニューの詳細を見て納得する神谷さんに、平気なフリをして答えた私。
内心は、ずっと心臓がばくばくしている。
本当ならもっと、パニックになっても仕方ないと思うくらい、だ。
けれど、さっきまでと同じように、神谷さんは至って普通だ。
お酒の席だからだろう、この間飲みに行ったときのように、会話の雰囲気から“取引先”のフィルタを早々に外していることがわかった。
だからこそ、意図がわからない。
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