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「大変だったよね、今回。修正も多いし時間はないし、で」
「あー……そうでしたね。もう記憶もぼんやりですけど」
苦笑いで返すと、神谷さんは片眉を下げて笑った。
「ははは。あんまり引きずらないタイプなんだ?」
「そう、かもしれないです。仕事に関しては」
嘘を吐くことでもないと思ったので、素直に本音を話した。
仕事に関しては、どれだけしんどかった案件でも、過ぎたこととして流せる。
無茶苦茶な要望に翻弄されても、徹夜が続いて疲弊し切った案件だったとしても、だ。
何となく、大変だったなー、キツかったなー、などと思い出すことはあっても、その詳細まで覚えてはいない。
よくいえば、切り替えが早く、悪くいえば覚えが悪い、とでもいえばいいんだろうか。
辛かったこともひっくるめて、過ぎたことだと思える。
あとは私が取り組んだ“仕事”が世に出て、キッチリ形になってくれればいい。
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