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ポロン…
ポロン、ポロン…、
穏やかな優しい、けれど寂しげで切ないピアノが聴こえた。
ふわふわと地面についていないような感覚がこれは夢だったのかもしれないと思わされるのだけれど、夢にしてはいやに現実味があった。
「、」
くらり、目の前が一瞬歪んでそれが収まったと同時に自分が目眩を起こしたのだと悟る。
ポロン…、まだピアノの旋律は続いている。
白い部屋
赤い薔薇
簡素、そう一言で言い表すには余りにもここには適当であり、不適当であった。
『―――、』
ふと名前を呼ばれた気がした。
いや、確かに私の名前を呼ばれたのだが、それは決して私の名前ではなかった。
訳がわからない、何も考えたくないのに、頭は勝手に何かを考え出す。
ふわふわとしていた意識は段々はっきりと明確なものに変わっていく。
『―――、』
また私の名前が呼ばれた。
それが更に私の意識を明確にしていく。
しかし不思議と部屋は夢の中に落ちていくように段々不確かな物へと変わっていっていた。
赤い薔薇がグニャリと歪む。
私はそれが恐ろしくて、だけれど妙に冷静な頭で世界が消える瞬間声に振り返った。
そこには―――……。
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