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バシャッ、意識が完全に戻ると同時に顔に大量の水がかけられた。
「……?!」
そして腹部に、――否、腹部だけではない、全身に鈍い痛みが走った。
続けてキャハハハハッと下品な声が聞こえたと同時にこれが現実なのだと頭が確信する。
所詮苛めと言うやつだ。
今に始まったことではない。
しかし何時から始まったのか分からない辺り、相当前からだと言うことは言わずもがな容易に想像できる。
何と言う悪夢だ。
しかし今となってはそう形容することすら相応しくない気さえする。――地獄と言っても過言ではないし、まるで終わらない拷問だ。
「ニーナちゃ~ん、何考えているのかな~?」
「私たちと楽しく遊んでいるのに他のことを考えるだなんてひど~い!」
ドガッ!
「ぅ、ぁ…」
これは明らかに鳩尾に入ったなと傷みについ声をもらすと、また彼女たちの笑い声が聞こえた。
酷いって思いっきり人のお腹を蹴るやつは酷くないのか。
その後も止まることがない暴行に段々意識が遠退いていくのが分かった。
意識がはっきりしたり遠退いたり、今日は忙しい日だなとボンヤリと思う。
既に痛覚は麻痺して途中から痛みこそ感じていなかったがやはり衝撃は感じる。
「何をしている?」
「―――君?!」
しかしそれが突然ピタリと止んだ。
名前は聞こえなかったがテノールともバスとも取れるその声から男生徒だと言うことは想像できた。
「……、」
それが誰なのか確かめたい、しかしもう目を開けることすら酷く疲れを感じ、この簡単な動作ですら億劫にさせた。
もう、いいや……
今は眠くて仕方ない、男生徒の焦ったような声をBGMに私はギリギリ保っていた意識を闇へと沈めた。
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