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ユルキとトゥーッカは図書室を出る。
すると壁を隔てていたために今までやや遠くに聞こえていた笑い声は確かにあの倉庫から聞こえてきていた。
「――消えちゃえ!!」
「!」
聞き取れた単語は今苛めが行われていることを確信させるには十分であった。
ユルキは素早く倉庫の扉を開いた。
「何をしている?」
我ながらドスのきいた声だったと思う。
「ユルキ君?!」
「ここは普段立ち入り禁止のはずだが…」
そこにいたのは数名の女生徒で、ユルキとトゥーッカの突然の登場に目を見開いて動揺していた。
「わ、私たち、先生に探し物頼まれてたの!」
「そッ、そうそう!何か無いみたいだし、私たち帰らせていただくわ!」
見え見えの嘘に思わず舌打ちをすると彼女たちはバタバタと脱兎の如く立ち去っていった。
それにユルキは眉間にシワを寄せ、トゥーッカは苦笑いを溢す。
「あ―あ――…、あれがお嬢様だなんて笑わせるよね~」
「トゥーッカも大概人の事言えないだろ」
「え?」
「……なんでもねぇ」
主人に敬語使わないのは従者と風上にも置けないやつに入るだろ、その言葉はグッと飲み込む。既にどちらが主でどちらが従者なのか分からない。
女生徒たちが去ったあとの倉庫内は物音せず、何事もなかったかのように思われた。
しかし彼女たちがいた場所――入り口からでは完全に死角となっていた――を確認する。
「!なッ!?」
「これは――…」
そこにあったのは完全に意識を失っている濡れ鼠状態のニーナの姿だった。
トゥーッカは手際よく脈を取り呼吸を確認すると気を失っているだけだとニーナに着ていた上着をかけながらユルキに報告する。
「あいつら、何が探し物だ」
「そうだね、……取り敢えず、医務室に連れていかなくちゃ」
「あぁ」
持ち上げた体は思っていた以上に、――女子と言うことを抜いても――その体重は異常に軽かった。
ユルキはトゥーッカに気付かれないように小さく舌打ちをし、医務室へと急ぐのだった。
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