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しばらくして落ち着いてくると、ユルキは適当な椅子にどかっと座り込む。
「で?」
「はい?」
「お前は何故こんなになるまで助けを呼ばなかった」
「………、」
途端にニーナは黙りこみ瞳を伏せた。
その行動にユルキは眉間に更に深いシワを寄せるが急かすことはしない。
トゥーッカは口を挟まないあたり、やはり彼も気になっているのだろう。
しかし、一向に彼女が口を開く気配はない。
「…悔しくねぇのかよ」
痺れを切らしたユルキがそう言うと伏せていた瞳を上げ、あの儚いような諦めを含んだ瞳をスッと細めその顔に笑顔を貼り付けた。
「悔しい……、なんてとっくに無くなりました」
「それは……!」
「何時からなんて覚えていません、気がついたらずっと…、抵抗したって一対大勢なんです敵うわけありませんから、多分早々に抵抗することは諦めました。
気の置ける友人もいませんし」
トゥーッカが口を開くが、それを遮ってニーナは口からスラスラとまるで台本が元から存在していて、その中の一登場人物を演じているかのように言葉を紡ぐ。
「これが“報い”なのでしょう…」
再びその場に沈黙が走った。
誰も動こうとしない、ただ“報い”その言葉だけがいやに耳に残った。
しかしその重い沈黙を再び破ったのはユルキであった。
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