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「神谷さん」
「っ!」
その一言で、心臓が跳ねる。
私の様子を注意深く伺っている長瀬が、体ごとこちらへ向く気配がした。
「一緒だったんじゃねーの?」
言い当てられた事実。
動揺を隠そうとする私と、暴こうとする長瀬。
静かな空間に、緊迫した空気が流れていた。
探るような目つきをやめない長瀬が、徐々に距離を詰めてくる。
「なあ、羽村?」
「な、何よ……」
「誤摩化せると思ってる?」
いつの間にか、長瀬の甘い顔が至近距離まで迫っていた。
私の心を見透かすかのような言葉と一緒に、揺さぶりをかけてくる。
生きた心地がしないって、こういうこと?
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