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「ちょ、長瀬……っ!」
必死に肩を押して、顔を上げさせる。
蛍光灯から逆光になっている長瀬の顔は、妖しく歪んでいた。
……この顔は、まずい。
こんな風に危険を察知するのは、いったい何度目になるんだろう。
息を呑む私に、長瀬は微笑んだ。
「ミオ」
「っ……」
こうやって、名字じゃなくて名前を呼ぶ時の長瀬は。
驚くほど甘い声をして、獣のような光を瞳に宿してる。
だめだ。
逃げられない。
そう頭で理解するより前に、体が動いていた。
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