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『……俺には、権利なんて、ねーよな……』
呟いた言葉は、私の耳に届いてはいても、深く理解するには程遠い。
何のことを言っているんだろう、そんなことをぼんやり思うくらいしか出来なかった。
ただ長瀬にしがみついて嬌声をあげる私に、まともな思考を求める方が無茶だ。
『……お前は、お前の好きにしてりゃいーんだよ……。神谷さんと飲もうが、他に男作ろうが……』
一瞬、長瀬の眉間のシワが深くなった気がした。
何かに耐えているみたいな、そんな顔。
ぼうっとした視界の中浮かび上がるその切なげな表情に、胸に甘い痛みが走り、心が揺らされる。
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