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「澪、ちゃん……?」
「そうそう! 羽村澪ちゃん! 真面目でカワイイ、澪ちゃん! なっ」
ちょっとだけからかいを含んだような声色だった、ような気もする。
私はまた引きつった笑みを浮かべながら会釈した。
神谷さんも何となく、会釈を返してくれた。
けれど私が気になっているのは、さっき神谷さんが一瞬見せた、険しい顔だった。
何とか落ち着こうと、目の前のグラスに口をつける。
目が合ってしまうのが怖くて、神谷さんの方を見れなかった。
隣のユリナちゃんもやっぱり、そわそわして俯いている。
私はテーブルの下で、ユリナちゃんの手をぽんぽん、とタップした。
根拠はないけれど、『大丈夫』……そう伝えるために。
神谷さんの飲み物が届いた途端、「みんな注目ー!」と松原さんが立ち上がる。
「ほら、お前も!」
そう言って、神谷さんにも立ち上がるよう促して。
肩を組んで、楽しげに言った。
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