【第10話】約束と秘密の間

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  「男子メンバー最後のひとり、神谷響くんでーす! こーんないい男なのに彼女ナシ! 飲み会誘ってもなかなか来ない、つれないヤツだけど! 仲良くしてやってねー!」 その紹介に、みんなが笑いながら拍手をする。 神谷さんも少し眉を下げながら笑って、「よろしくお願いします」と頭を下げた。 「で、女子の皆さんは、ウチのクライアント、T社の方々! みんな、コイツに名前教えてやって!」 そう松原さんが言うと、女性側の幹事が「はーい!」と答えて名乗った。 右側から順番に名乗る流れで、私の隣のユリナちゃんが恐る恐るといった様子で「宮野ユリナですぅ……」と呟いて。 いちど、ごくりと喉を鳴らしてから、私も続いた。 「羽村、澪です。よろしくお願いします」 にっこり、笑ってみせる。 そう見えている、はずだ。 何の自信もないけれど、凛とした態度に見えるように。 私は背筋を伸ばし、神谷さんをまっすぐ見た。 何かを考えるような素振りを見せてから、神谷さんは私に向き直って言った。 「神谷響です。はじめまして」 その穏やかな笑顔が、私の心配を吹き飛ばしてくれた。 神谷さんは言った。 『はじめまして』と。 それはつまり、私とユリナちゃんが吐いている嘘に、付き合ってくれるということだろう。 心から感謝しながら、グラスを持ち上げた。 .
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