【第10話】約束と秘密の間

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  「とりあえず、乾杯、ですよね?」 そう微笑むと、神谷さんは一瞬驚いた顔。 そしてすぐにあの柔らかい笑みに戻って、同じようにジョッキを手に取った。 「ええ。では、乾杯」 グラスを合わせると、周りのみんなも口々に「乾杯!」と明るい声をあげる。 私は二杯目に頼んでいた梅酒のソーダ割を喉に流し込みながら、思った。 ……契約、みたいだったな。 私たちの、小さな嘘の片棒を担ぐ、契約。 神谷さんはそこまで考えてはいないだろう。 そう思いながらも私は密かに、小さな達成感を覚えていた。 同時に、思う。 また新たな“秘密”ができてしまった。 ……今は、長瀬のことなんて、全然関係ないのに。 むしろあんな“約束”なんて、一方的で無茶な要求で、私に何のメリットもないのに。 ……ううん、それよりもっと、気にしなくちゃいけないことはあるはず、なのに。 目の前の出来事を切り離した場所で、私は新しく生まれた“秘密”と抗えない“約束”を、頭の片隅に刻んでいた。 .
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