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ここで食って掛かっても、損をするのは私の方だ。
これまでの経験上、こうなって長瀬に勝てた試しがない。
私はぐっと拳を握りしめて、耐えた。
「……いつ帰るの?」
「ん? もーちょいしてから」
「……そう、じゃ、シャワーしてくる。帰るならカギかけてってね」
ぷい、と顔を背けてその場から離れた。
精一杯の、抵抗だった。
長瀬の存在を無視してシャワーの準備をする私の背中で、くすくす笑う声が聞こえた。
「りょーかい、羽村サン」
……やっぱりこの男、殴ってやりたい。
その思いを何とか抑えて、浴室へと向かった。
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