第4話

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ハッキリと顔の表情まで見える訳じゃないが、いつもの人形みたいな無表情でもなく、俺に見せる不機嫌そうな顔でもなく、落ち着いた闘志に燃えた凛とした兵藤を俺は穴が開くほど見つめた。 綺麗だ、と無意識に思って慌てて視線を外す。 真剣に勝負する姿が綺麗なのは別に兵藤だけではない。一流のアスリート達の姿は男女関係なく綺麗だからだ。 でも、兵藤に対して綺麗だと思うのは抵抗がある。それは恐らく将爾姫などと周りが騒ぎ立てているせいだ。 そして、あの日感じた兵藤の唇の柔らかさや柔らかい匂いや髪の感触が突然ぶり返してきて、俺は居ても立っても居られなくなり慌てて踵を返し弓道場を後にした。
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